手作り食の方向け ー肝臓のトラブルでの「タンパク質制限」は不要のことが多いのでやめようー

タンパク質は大事です。

肝臓の数値が悪くなったからと、安易に「タンパク質制限」するのはやめましょう。

肝臓の働きは多岐にわたります。
様々な合成反応や分解反応、栄養素の貯蔵などを行っています。

消化管から吸収してきた栄養素や腸管内の毒素も、一度肝臓に入って代謝を受けます。

吸収した栄養素は、そのままでは体が使えません。
使える形に代謝したり、腸管内で悪玉菌が産生したアンモニアを無毒化するなどします。

ですので、肝臓の解毒機能が低下してしまった際には、大腸内でアンモニア(タンパク質の代謝産物)などの産生を抑えたほうがいいです。

そういった考えから、肝臓の組織が障害を受け、肝機能が不十分になった際には「タンパク質制限」が必要と思うかもしれません。

しかし、肝臓は再生能力が高い臓器でもあります。
肝臓の組織が障害を受けたとき、肝臓の再生のためにはタンパク質が必須の栄養素です。

・肝臓の解毒機能が低下してるから、タンパク質を制限した方がいいのか
・肝臓の再生のために、タンパク質を増やした方がいいのか

ジレンマのように思いますが、基本的にはむやみにタンパク質を制限するのはやめましょう。

もし仮に、食事中のタンパク質を極端に制限して、食事から摂取するタンパク質が不足した(その日に必要なタンパク質をまかなえなかった)場合、どうなるでしょう。

体には体タンパク質(筋肉)がありますから、体タンパク質の分解がすすみます。

その結果、もっと良くない状況に陥ります。

つまり、たとえ解毒機能が低下している場合であっても「不足しない最低限の量のタンパク質」は必須ということです。

とはいえ、未消化のタンパク質は大腸の悪玉菌がアンモニアに代謝します。
ですので、アンモニアの産生は最小限に抑えたいです。

そのため、消化のいい(なるべく未消化物が残らない)良質のたんぱく質にする必要があります。

手作りご飯の場合、タンパク質の消化率はかなり高いと私は実感しています。
肝臓疾患の際も、手作りご飯は有効であると考えています。

そういったことからも、タンパク質を制限するかどうかは慎重になる必要があります。

では、肝臓が悪くなってタンパク質制限が必要な場合はどんなときでしょう。
以下のようなごく限られた状況です。

・肝臓疾患の末期
・肝性脳症のリスクをはらんでいる症例

実際には、肝臓の数値がひっかかったからといって末期のケースはごく限られています。

犬用/猫用おやつやトッピング類を使用しているため、肝酵素値がわずかに上がっている(わずかでなく結構上がっている)ような子では
それらをやめるだけで肝臓の数値が改善し、特別な食事など必要ない事がほとんどです。

しかし、そんな症例でもご家族が療法食をホームセンターやネットで選択し肝臓用の療法食を与えられている場合などがあります。

「肝臓が悪い」とひとことで言っても、
・肝臓腫瘍なのか
・肝炎なのか
・胆管系の疾患なのか
など、病態はさまざまです。

また、むしろ肝臓が悪くなって「高たんぱく質」の食事が適応になることもあります。
胆管系の疾患で、胆嚢の収縮力が落ちていることが疑われるケースの場合などです。

(高たんぱく質のご飯も、手作りご飯が大得意な分野です。)

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